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「大淀病院事件」と産科壊滅の主犯
2007年 06月 26日 |
奇しくも対照的なニュースが同じ日に耳に入りました。

一つは、もうご存じの方も多いでしょう。奈良大淀病院で、出産中、不幸にも非常に希で重篤な病気を合併したために亡くなった方の遺族が、亡くなったのは病気の所為ではなく、医師のミスだと訴えた民事訴訟の初公判が行われたことです。

この事件は、夜間であったこと、今や産科はどこもかしこも人手不足で壊滅状態に近く、重症の産婦さんを受け入れられる人手、設備の整った病院が余りに少なかったため、主治医が必死に転院先を探したにも関わらず、なかなか見つからなかったことを、毎日新聞が噂を聞きつけて遺族を捜し出し「たらい回し」と表現して報道し、あたかも医師の怠慢であったかに煽ったことから、一気に産科バッシングが始まり、とうとう奈良南部の産科は壊滅しました。

詳しいことは、下記のリンクをご覧ください。
奈良事件訴訟始まる by 新小児科医のつぶやき
このブログの過去記事や寄せられたTB先を辿ると、事件の本当の経緯がわかります。
マスコミのお涙頂戴、常に悪役は医師と決めつける報道と、事実がいかにかけ離れているかがよくわかります。

「マスコミたらい回し」とは?(その72) 大淀病院産婦死亡事例民事裁判始まる→国内外の医師blogでは大淀病院の産科の先生への支援の輪が広がる by 天漢日乗
このブログで、「マスコミたらい回し」とは?とタイトルされた一連の記事を読むと、この事件についての事実とマスコミの姿勢、その重大な結果については、ほぼ把握できると思います。
どの記事もわかりやすく纏めてありますが、他のブログの紹介にもなっているこの記事にリンクさせていただきます。

当然ですが、私も大淀病院産婦人科医師を支持します。

言いたいことは色々ありますが、書き始めると長いなんてものじゃなくなりそうですし、私が書かずとも、もっと素晴らしいブログが沢山あるので、リンクの紹介だけに留めます。
リンクだって、私がいつも拝見しているということで二箇所選びましたが、この事件の詳細がわかり、医師の対応が適切であったことを検証しているブログは、大量にあります。

そこで漸くもう一つの記事です。



この事件で、既に人手不足で壊滅寸前だった産科にトドメを刺した毎日新聞の記事です。
医師不足:「医学部定員削減」の閣議決定、5党「見直し必要」 自民も「検討」
医師不足が深刻化する中、「医学部定員の削減に取り組む」とした97年の閣議決定について、民主、公明、共産、社民、国民新党の5党が「見直すべきだ」と考えていることが、毎日新聞の主要政党アンケートで分かった。自民も「今後の検討課題」とした。医師数の現状については、民主、共産、社民が「絶対数が不足」と回答し、自民と公明、国民新党は「地方や診療科によって不足」と認識に差があるものの、各政党が医師不足への危機感を示したことで、医師数抑制を続けてきた国の政策が転換に向かう可能性が出てきた。
大淀病院事件のような事例が発生した根本的な原因は、国の極端な医療費削減姿勢にあります。
医師を減らすという閣議決定も、理由は「医師が増えると医療費が増えるから」です。
そりゃそうですね。
患者が千人いて、千人診るのに必要な数の医師がちゃんといれば、千人分の医療費がかかります。
でも、医師が五百人分しかいなければ、医療費は五百人分しかかかりません。
勿論、残る五百人は、医師にかかれずに死ぬわけです。

政府と厚労省は、医師が過剰になると言いますが、かつて日本の人口当たりの医師数が、OECDの平均を上回ったことはありません。そもそも過剰になるという旧厚生省の推計にしても、過剰になるかどうかの基準値をOECDよりずっと低いところに設定しての計算です。
OECDの平均、つまり世界的にみても、医師が増えすぎるっていう推計ではないのです。世界的に見たら足りないけど、日本は日本だから、それでも余るの!という意見です。
つまり最初から、数は増やさないという結論が先にあったのです。
これが政府、つまり自民党が行ってきた政治です。

これらを見れば、大淀病院事件で本当に訴えられるべきは政府であり、国であり、自民党であり、厚労省であることは自明でしょう。

でも医師個人の方が、国という大きな相手より叩きやすいですし、事実、毎日新聞は、個人を叩く方を選び続けている訳です。
マスコミの総バッシングにあって耐えられる個人なんて滅多にいませんから、当然の帰結として、ミスがなくても叩かれる報道を目にした医師達は震え上がり、奈良南部の産科は壊滅しました。
一体、報道機関の矜持ってものは、どこにいったのか聞きたくなりますが。

その根本原因となった閣議決定について、この記事では、政府与党以外の党は、「医師が足りないの!日本は先進国として恥ずかしい程、医師の充足率が低いの!(※)」と、医療崩壊の現実を認めていますが、与党だけは、まだ「足りないんじゃなくて偏ってるだけ。でもまあ選挙前だし、見直すことも考えてみるとは言っておくか。本当に考えるかはわかんないけどさ」という態度な訳です。

(※ 日本の医師数は足りませんが、これまでは医療現場の自己犠牲的努力で世界トップクラスのレベルを維持してきました。それもとうとう限界を超え、医療崩壊が始まっています)

過去の自分達の失敗を棚に上げ、責任を感じるどころか、まだ現実を認めようとしてません。
こうしている間にも、着々と日本の医療は崩壊の道を辿っています。

毎日新聞は、これを記事にしながら、政府の失策と認識の甘さを批判することはしていません。
それどころか、「自民も「検討」」という見出しをつけることによって、政府だって考えてるという誤解を与えかねないことをしています。

実際には、対策として各党があげたことを見れば「不足地域に国が緊急的に医師を派遣する体制を整備」というのが自民・公明の姿勢です。
派遣しようにも、そもそも余ってないのですから、派遣する医師がいなくて、この手の対策が過去ことごとく失敗に終わっていることにも触れていません。
他党の対策と比べれば「医師は増やさない、今いる医師でまかなえ、でないと医療費が増えちゃうからね」という本音は丸見えであるにも関わらず。
仮にも報道機関であるなら、日本が他の先進国と比べて、GDPに対する医療費が圧倒的に低く、かつ公共事業費は異様に高いということくらい触れてしかるべきでしょう。
大淀病院事件での医師と病院に対する報道姿勢とは、天と地です。

医療崩壊の主犯が国と自民党であるなら、従犯はマスコミというところでしょうか。
折しも参院選を控えています。
マスコミの報道姿勢が、国の医療政策が招いた日本の医療崩壊から国民の目を逸らし、結果、崩壊が一層進むとしたら、その責任は重大でしょう。
アンケートは主要6党に、医師不足に対する認識や参院選に向けた政策などを聞いた。97年の閣議決定については、自民以外の5党が「見直すべきだ」とした。理由は「医師不足の実態に即して医学部定員を元に戻す」(民主)▽「地域医療に従事する医師数を増やし、医療の高度化や集約化に対応する」(公明)▽「地方に住む人々に安心した医療を提供する」(国民新党)を挙げた。自民も「勤務医の過酷な勤務の改善のため、必要な医師数の検討が必要」と、見直し自体は否定しなかった。
 医師数への認識では、自民が「一定の地方や診療科で不足が顕在化している」、公明も「へき地で医師が不足し、小児科、産科の医師不足は深刻化している」と、部分的に不足がみられるとの姿勢。一方、民主は「OECD(経済協力開発機構)加盟国平均にするには10万人足りない」、共産が「『医師が余っている』地域はない」、社民も「このままではOECD最下位になる」として、3党とも絶対数が不足しているとの認識だった。
 医師数を巡っては、政府が「人口10万人当たり150人」を目標に、73年から「1県1医大」を推進し、83年に目標を達成した。しかし、旧厚生省の検討会が84年、「2025年には全医師の1割程度は過剰になる」との推計値を公表し、同省も各大学に医学部の入学定員を削減するよう協力を求めた。97年には政府が定員削減を継続することを閣議決定し、現在も政策の基本となっている。
 しかし、医療の高度化や高齢化で、OECD加盟国の多くは医師数を増やし、04年の加盟国平均(診療に従事している医師数)は10万人あたり310人。日本は200人で、加盟国中最低レベル。
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 ■主要各党が参院選で訴える主な医師不足対策■
 ◇自民・公明
 不足地域に国が緊急的に医師を派遣する体制を整備。研修医の都市への集中を是正するため、臨床研修病院の定員を見直す
 ◇民主
 10%削減された医学部定員を元に戻し、地域枠、学士枠、編入枠とし、医師育成の時間短縮や地方への医師定着を図る
 ◇共産
 閣議決定を撤回し、医師養成数を抜本的に増やす
 ◇社民
 医師を増員し、労働環境を改善するとともに、医療の高度化・複雑化への対応、質と安全の向上を行う
 ◇国民新党
 OECD並みの医療費確保を公約として掲げ、世界一の国民皆保険制度の堅持を目指す
毎日新聞 2007年6月25日 東京朝刊

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