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正常なお産ばかりじゃない
2007年 09月 12日 |
<妊婦受け入れ拒否>千葉でも5月に 23医療機関で42回 | エキサイトニュース(毎日新聞)
妊婦受け入れ延べ42回拒否 千葉県、収容まで2時間43分 | エキサイトニュース(共同通信)
肝心な部分の説明がなく、誤解を与える報道の仕方もますます堂に入ったものだが、そんなに日本の産科を滅亡させたいのか。

医療問題に触れるのは結構疲れるので、暫くはのんびりスキンだけ公開していたかったんだが、これだけ読むと誤解する人が多いんだろうなと思ったので、やむをえず書くことにする。

産科の医師がご覧になったら、それは違うと思われるかもしれないので、その時は教えて頂けると嬉しい。



気になったのは、この部分。
42件の拒否の理由は、25件が「初診の患者を診ることはできない」で、このほかは「処置中」「医師不在」などだった。
まず、処置中は当然。
医師の手は二本しかないので、他の患者を診てれば、当然別の人は診られない。今診ている患者を放り出せって言うなら別だが。

医師不在も当然。
総合病院でも、いまや産科医は数がギリギリ、いるだけマシという所が多いから、当然、一人か二人といった数少ない産科医が毎晩当直なんかできない。
そんなことしていたら、産科医は家に帰れなくなって過労死する。
産科医がいないのに、お産の受け入れができないのは当たり前だ。
何科の医師だって、お産くらい診られるだろうって人は、「貴方ならできる?」という記事を読んでから言って頂きたい。

ついでに付け加えておくが、専門医がいないのに患者を受け入れて、結果が悪かったら、訴訟で負ける。
治療の内容に間違いがなくても、専門医だったらもっと高度なことが出来たはず、救急を受け入れるなら、そこまで出来なくちゃ駄目と負けることも十分考えられる。
実際に、そういう判例もある。
そもそも患者にしても、産科医でない、全く産科の訓練を積んでいない医師にお産をして欲しいと望む人は多くないだろう。

だから、十分な受け入れ態勢が取れないのに受け入れるのは駄目だと、裁判所、つまり国が言っていると理解しておくべきだ。
また、そういう場合、間違いなくマスコミによるバッシングが起こるし、それに同調する人も多い。
従って、これは医師のせいではない。
文句は国なりマスコミなり、あるいはそれに同調する人に言うべきだ。
専門じゃなくても、その医師に出来るだけのことをしてくれればいいじゃないか、それで駄目なら仕方ないんだ、それを逮捕だの何だの言うから、受け入れ先が減るんだと主張すべきだろう。

さて、本題だ。
だらだら書いたが、ここまでは、そんなこと言われなくてもわかってる、常識だと言う人も多いと思う。

気になったのは「初診の患者を診ることはできない」という部分。
ここの説明がなさすぎる。
これでは、医療に関心のない人は誤解する。
というより誤解させようとして書いているとしか思えない。

これだけを見たら、なんて冷たいんだ、医師なのに苦しんでいる人を助けないなんてと受け取る人もいるのじゃないか。
だが、これはそういう問題じゃない。
上記の2点目、十分な受け入れ態勢が必要という部分に関わってくる大事な問題なのだ。

多分、この記事を読んで、初診だからと断ることはけしからんと感じた人は、以下の何れかに当てはまるのじゃないか。
・お産といったら正常分娩しか浮かばない。
・どの病院でも、同じように治療が出来ると思っている。
・医師が一人いれば何でも出来ると思っている。

だが、これらは何れも間違っている。

お産には一定の割合で必ず難産が混じるものだ。
病院によって設備や診療科が異なり、できる治療にはかなり隔たりがある。
難しい患者の場合、医師は何人も必要だ。

さて、その上で初診ということが何を意味するか。

まず、その妊婦が正確に妊娠何ヶ月かわからない。
従って、赤ん坊が十分育っているのか、未熟児なのかわからない。
記事では41週と書いてあったが、それは後からわかったことだろう。
病院に行かないと確かなことはわからないのだから。
現に先日の奈良の救急車事故死産のニュースでも、妊娠何週かという情報は、最初と最後で随分違っていた。

それから、赤ん坊が一人かどうかもわからない。
双子、三つ子の可能性だってある。
そうなると、一人一人の赤ん坊は小さいことが多いから、それだけ難しい。

妊婦が健康かどうかもわからない。
もしかしたら妊娠中毒症があるかもしれない。元から心臓病など持ってるかもしれない。
お産にリスクになる病気は一杯ある。
それらがないという保証は何処にもない。

赤ん坊が健康かどうか、正常な位置かどうかもわからない。
先天性の病気の場合、生まれてすぐ治療が必要なこともある。
当然、生まれた赤ん坊の治療をするのは小児科医だから、小児科医の待機が必要だ。

ざっと思いついただけでも、これだけ並ぶ。

正常分娩なら、それは産科医が一人いて、普通の病院でも大丈夫だろう。
だが、これらのうち、どれかに引っ掛かったら?
初診なのだから、引っ掛からない保証はどこにもない。
滅多にないと言える程、珍しいことでもないだろう。

実際、私自身のお産は安産だったが、それでも8ヶ月から胎児が下りてきていると言われて、ずっと薬を飲んでいた。
お産中も私がいきみを逃がすのが下手だったからだろうが、心音が下がってるからいきむなと言われた。
生まれた息子は小さめで、もうちょい小さかったら保育器だったろうし、黄疸が強いと言われて、退院は少し延びた。
これでも、正常分娩のうちだ。
正常でも、これだけリスクがあるのだ。

妹は糖尿病が出て、妊娠中毒症になりかけ、よれよれになって入院し、なんとか生ませてもらった。
友人は前置胎盤と言われて帝王切開だったし、別の友達は、陣痛が弱くて、とにかく異様に時間がかかった。
別の友人は死産だったし、従姉妹は不妊治療の結果、三つ子を、かなり未熟な状態で生み、ずっと赤ん坊はNICUに入っていた。

今更だが、こうやって数えると、全く何の問題もなく妊娠、分娩した数って、私の周りでは、精々7割がいいとこじゃないか?
逆に言うと3割が難産だった訳で、私だって、あのまま心音がどんどん下がっていったら、どうなっていたかわからない。

話を戻すと、初診ということは、こういう可能性があるのに、何もわからないのだ。
どこかの病院にかかっていれば、別の病院に運ばれても、問い合わせて、多少のことはわかるだろうし、少なくとも、妊娠何ヶ月かどうかも確かじゃないなんてことはありえない。
だが、どこにもかかっていなければ、情報を探そうにも何処にもないし、本人にもわからない。

従って、帝王切開になるかもしれない、NICU、小児科医が必要かもしれない、妊婦の病気によっては、そちらの専門医もいるかもしれない…などの可能性を全く否定できない。
わからない以上、何が起こっても対応できる態勢がないと受け入れられない。
受け入れてから、例えば、すぐに小児科医による治療が必要だった、でもその病院には小児科がない、となったら困るからだ。
そのような場合、最悪、母子が死ぬかもしれないのだから。

初診は受け入れられないというのは、つまり何か問題を抱えたお産だった場合、対応できる態勢がないということなのだ。
わからないのに駄目で元々と受け入れられ、その結果、母体や赤ん坊が死亡したら、それでも仕方ないと言える人しか、初診を断ったことを非難はできない。
後から、その病院が安易に受け入れなければ、もっと高度な治療ができる病院に行けたかもしれないのに、何故対応できないのに受け入れたのかと思うなら、非難はできない。
しつこいようだが、初診ということは、正常分娩になるか、非常に難しいお産になるか、全く!わからないのだから。
そもそも、ずっと通っていて、正常に産めるだろうと思われていてさえ、いざとなると何が起こるかわからないのがお産だ。
それなのに大丈夫だろうとは安易に言えない。
「多分」じゃ駄目だと国もマスコミも国民も口を揃えているのだから。

本来、マスコミは、初診を診られないとはどういうことか、きちんと報道すべきだ。
それがなければ誤解を生み、ただでさえ追い詰められた産科医療を更に追い詰めることにしかならないし、だからきちんと検診を受けることが必要なのだという啓蒙としても全く不十分だ。
何故、難しい産婦でも受け入れが可能な病院が、これ程不足するのかという本質に、読者の目を向ける役にも全く立たない。
これでは、ただ医師叩きをしたいだけだと言われても仕方ないだろう。
誤解を広める役にしか立たない報道なら、しない方がマシだ。
マスコミは、そんな記事しか書けないことを恥と感じるべきだ。

<妊婦受け入れ拒否>千葉でも5月に 23医療機関で42回  毎日新聞 [ 09月12日 00時43分 ]

 千葉県柏市で5月、23歳の妊婦が23の医療機関から救急搬送の受け入れを断られ、救急隊の問い合わせから茨城県内の収容先の病院が見つかるまで約2時間20分かかっていたことが分かった。

 同市消防本部によると、5月21日午前1時9分、女性が「陣痛が激しく耐えきれない」と119番通報、8分後に救急隊が到着した。女性は妊娠41週目でかかりつけの病院がないため、県内外の病院に受け入れ要請の電話をした。しかし、23医療機関で延べ42回断られ、午前3時半過ぎ、24カ所目43回目でようやく見つかり、同3時52分に病院に到着した。

 42件の拒否の理由は、25件が「初診の患者を診ることはできない」で、このほかは「処置中」「医師不在」などだった。同本部は「女性は意識もはっきりして破水もなかったが、病院で無事出産したかは確認していない」としている。【橋本利昭】

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